社外で業務をする際の労災保険適用の考え方

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大により、オンラインで会議をしたり、オンライン研修を受けたりすることが増えました。一方で、新型コロナが5 類相当に移行したことで、新型コロナ前のように社外での対面による商談等も増えてきています。そこで、社外でケガをしたり、病気になった場合の公的保険の取扱いについて確認しておきます。

労災保険の概要

従業員の仕事中や通勤中のケガや病気は、原則として、労災保険から被災した従業員やその遺族に対し、必要な保険給付が行われます。 仕事中に被災したときには「業務災害」、通勤中に被災したときは「通勤災害」として分けて扱われます。両者の給付内容に大きな違いはありませんが、業務災害の一部には労働基準法における解雇制限が設けられています。

出張の取扱い

 社内(事業場の施設内)で業務をするほか、出張として、会社の指示により社外(事業場の施設外)で業務をすることもあります。社外で業務をしているときにケガや病気になったときには、原則として業務災害として取り扱われます。 なお、社外での業務中に、積極的な私的行為を行うといった特段の事情がある場合には、そもそも労災保険の給付の対象として扱われません。

直行・直帰の取扱い 

出張の中には、遠方の客先等に訪問するような場合を中心に、会社からの指示に基づき、自宅から客先などに直接赴き(いわゆる「直行」)、または客先から直接帰宅する(いわゆる「直帰」)こともあります。 このような直行・直帰の際にケガをしたり、病気になったりしたときには、どこを業務の開始や終了として扱うかわかりづらいものです。 これについては、自宅を出発したときから自宅に帰るまでの全体を業務としてとらえ、その期間のケガや病気は、原則としてすべて業務災害として扱うことになっています。 ただし、例えば、帰宅途中に、業務とは関係ない飲食を長時間にするといった私的行為があるようなときは、その私的行為中と私的行為後のケガや病気は労災保険の給付の対象となりません。

本来、労災保険から給付を受けるべきところを、健康保険証を医療機関で提示し、診療を受けてしまうこともあります。特に社外で活動しているときは、医療機関でも仕事中の被災なのかを把握しづらいため、従業員にどのような場合に労災保険の給付の対象になるのか、あらかじめ周知することで誤った対応をしないようにしておくとよいでしょう。