独禁法の意義
独占禁止法(以下「独禁法」)と聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。もしかすると、その名称から、特定の業界において非常に大規模なシェアを持つ一部の大企業に関係する法律で、それ以外の多くの企業には関係のない法律と思われるかもしれません。しかし、独禁法とは事業者の公正な競争を阻害する様々な行為を規制する法律であって、企業の規模を問いません。また、近年、企業間の適正な価格転嫁による賃上げの実現や個人事業主との関係でフリーランス保護などが問題になっており、中小企業の業績や労務環境の悪化のしわ寄せの原因が、実は独禁法に抵触する不当な行為による可能性もあります。
これらのことから、独禁法は中小企業においても大いに関係のある法律といえます。
改めて独禁法は、「公正かつ自由な競争を促進することを目的とする」法律(独占禁止法第1条)で、その保護の対象を「競争」そのものとしていますから、「競争者(事業者)」を直接保護することを目的とした法律ではありません。つまり、独禁法は、中小企業を保護するために大企業の行為を規制するのではなく、あくまでも企業間の競争における不公平な行為を規制します。したがって、仮に中小企業が大企業との競争に負けても、その競争間に不公平な行為がない場合には、独禁法の問題は生じませんし、また、可能性は高くありませんが、中小企業が大企業に対して不公平な行為をした場合には、中小企業が独禁法の規制を受けることになる可能性もあります。
不公平な行為とは
独禁法において企業間の公正な競争を阻害する不公平な行為は、次の4類型に分類されます。
① 不当な取引制限:談合、カルテル等
② 私的独占:市場支配的な企業による排除行為等
③ 不公正な取引方法:優越的地位の濫用、再販売価格維持等
④ 企業結合規制:合併、分割、事業譲受等
最後に
繰り返しになりますが、独禁法の目的は、中小企業を大企業から守ることではありません。大企業との取引適正化を実現するためには、中小企業自ら独禁法の趣旨や内容を理解し、取引に臨む姿勢が求められます。