岸田首相の少子化対策の一環で
パートタイム労働者の給与が一定の金額を超えると税金や保険料の負担が増えて手取りが少なくなり、働き損(?)が生じてしまう「年収の壁」。岸田首相は会見で「106万円、130万円の壁について被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などを導入し、さらに制度見直しに取り組む」と発言しました。
誰でも働いて賃金を得れば一定の要件の下に厚生年金の適用者(第2号被保険者)になることが義務付けられます。
低賃金の方であれば国民年金保険料を負担するより安い場合があり得ますが、すでに3号被保険者で被扶養者である人(多くはパートの主婦)は保険料の支払いが生じ手取りが減るという現象になります。
年収の壁問題は前からあった
近年、年収の壁の問題が脚光を浴びているのは最低賃金の水準が持続的に大きく引き上げられていることがあります。
一般に働く側から見れば賃上げは好ましいはずですが、ラインぎりぎりで働く人はそれだけ年間時間数を抑制します。企業から見れば賃上げしても抑制されるのでメリットが少なくなります。事実、2022年の全国平均の最低賃金は時給の平均は961円で10年前より28%増となり1,000円台近くまで上がっています。
立ちはだかる社会保険の加入の壁
1つ目の壁が年収「106万円の壁」(月額8.8万円)で、令和6年の10月に被保険者51人以上事業所に働く人も適用対象になります。もう1つの壁は年収「130万円の壁」です。
社会保険の被扶養者は年収130万未満が対象ですが、ここでは労働時間を伸ばせば加入の対象になり、扶養から外れます。事業主負担のある厚生年金加入は有利な場合もあり、必ずしも不利とばかりは言えませんが手取りは下がるでしょう。
パートタイマー主婦に大きく依存しているサービス業などでは、人集めのために時給を上げると逆に年末の多忙な時期に就業してもらえないなどと逆効果です。労働者は働きたくとも十分に働けず、企業も人手不足対策が取れないという八方ふさがりの状況です。