社会保険の特定適用事業所では、月額賃金が8.8 万円以上となると、社会保険に加入することになる「106 万円の壁」(※)があります。この年収の壁対策の一つとして、2023年10月以降に新たに社会保険に加入したパートタイマー等に対し、1 人あたり最大50万円が支給される助成金が新設されました。
手当等支給メニュー
今回、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。その中の「手当等支給メニュー」は、会社がパートタイマー等を社会保険に加入させる際に、社会保険料の負担を軽減するための手当を支給することにより、パートタイマー等の収入を増加させたときに、助成金が支給されるものです。取組み内容は下表のとおり3 段階(3年間)に分かれており、半年ごとに支給申請をします。
要件 | 一人当たり助成額 |
---|---|
①賃金の15%以上を追加支給 | 1年目20万円 |
② 賃金の15%以上を追加支給 3年目以降、③の取組みを行う | 2年目20万円 |
③ 賃金の18%以上を増額 | 3年目10万円 |
労働時間延長メニュー
拡充された「労働時間延長メニュー」は、所定労働時間の延長と賃金を増額させ、社会保険を適用させたときに助成金が支給されるものです。週の所定労働時間を4時間以上延長するときは、時間給の引上げ等による賃金の増額が不要であるため、手当等支給メニューと比較すると会社の負担は相対的に小さくなります。
週の所定労働時間の延長 | 賃金の増額 | 1人当たり助成額 |
---|---|---|
4時間以上 | ー | 30万 |
3時間以上4時間未満 | 5%以上 | 30万 |
2時間以上3時間未満 | 10%以上 | 30万 |
1時間以上2時間未満 | 15%以上 | 30万 |
併用メニュー
各々のメニューによる助成金を受けるほか、1年目は手当等支給メニューを実施し、2 年目に労働時間延長メニューを実施する併用メニューを活用することも可能です。いずれのメニューの利用を予定しているかは、事前に提出する「キャリアアップ計画書」に記載することになります。
このキャリアアップ助成金の改正と併せて、「社会保険適用促進手当」が創設されました。これは、事業主が社会保険を加入させることに伴い、手取り収入を減らさないよう手当を支給した場合は、本人負担分の保険料相当額を上限として社会保険料の算定対象としないというものです。このように社会保険加入時の負担軽減を図る措置が設けられていますが、現実的には社内における不公平感などにも配慮することが求められます。良かれと思って行ったことが、結果的に社内の不満の原因とならないよう、実施の際には十分な検討が求められます。
※ 106 万円は月額8.8 万円を年収換算した概算額。他にも社会保険加入の要件があります。