金銭解決の必要性
「日本では労働者を解雇することが難しい(解雇規制が厳しい)」ということを多くの人が知るようになりました。現状、日本の労働法においては、裁判所が会社に対し、「従業員の解雇を認める代わりに従業員に○○円支払いなさい」という判決(命令)を出すことはできません。なので労働者は裁判において「当該解雇が有効か無効か=自分がまだ会社に在籍しているか否か(労働契約上の地位確認)」を争うことしかできません。つまり、従業員の本音として、「会社に残りたくはないから、納得のいく金銭が貰えれば退職しても良い」と思っていても、その金額を裁判で争うことはできないわけです。
しかし、実際には会社が従業員に対し、解決金を支払うことにより、紛争が解決するケースは少なくありません。これは、上記の労働者の本音と同様に、会社としても本音は、「ずっと裁判を続けるよりも、金銭で解決したい」と思っている場合も多くあります。そこで裁判所が和解提案という形で「会社が○○円支払うので、従業員もそれで退職に合意したらどうですか」と提案し、当事者双方がそれで納得すれば「合意退職」という形で問題が解決します。その意味で、解雇に伴う金銭解決は実務上多く用いられます。
解雇解決金を決める要素
会社として気になるのは、「それでは解決金としていくらくらい必要なのか」ということになるでしょうが、当然、一概に「○○円くらい」と示すことはできません。しかし、過去の裁判例などから、一定の金額決定要素は推測が可能です。
・当該解雇が有効か無効か
仮に決着がつくまで裁判を続けた場合、当該解雇が有効と認められそうな場合には、解決金は低額に、無効となりそうな場合には高額になる傾向があります。
・従業員の本音がどこにあるのか
従業員が本心から「退職したくない、会社に戻りたい」と思い、それを明言している場合には、解決金は高額になる傾向があります。
・争いの期間の長短
当該解雇事案に関する争いが長期にわたるほど、解決金が高くなる傾向にあります。
その他、転職が容易か否か、正規か非正規か、その会社の在籍期間や直近の収入なども当然決定要素になります。