【コラム】民法上の組合 インボイス対応

民法上の組合はパススルー

民法上の組合は、組合契約での組織であるため法人格を有しておらず、課税対象団体にはなり得ず、組合そのものに法人税等の所得課税がされることはありません。課税対象は、組合の各組合員となり、組合の損益状況を組合員が自らの損益計算の中に持分相当で総額主義的に取り込むことにより、組合員が個人であれば所得税が、組合員が法人であれば法人税が課税されることになります。これをパススルー課税と言います。

民法上の組合とインボイスでの原則

ところが、民法上の組合の組合員がインボイス発行登録事業者だったとしても、その事業者の所属する組合にはインボイス発行登録事業者になる資格が原則としてないこととされています。なお例外として、全組合員がインボイス発行登録事業者で、その旨の届出書を所轄税務署に提出している場合に限り、インボイスを交付することができるとされていますが、インボイス発行事業者とそれ以外の者が混在する組合の場合には、組合にインボイス発行権限がないので、売手側の売上税額と買手側の仕入税額とに齟齬が生じ、適正な取引の成立が難しくなります。

民法上の組合では都合が悪い

従来は、任意の団体名義で取引するケースにつき、民法上の組合と認識することが多かったかもしれませんが、インボイス制度の導入及び民法上の組合のインボイス発行権限否認の制度の導入により、今後は、自分たちの組織は民法上の組合ではない、あるいは民法上の組合だとしても、組合固有業務とそれ以外の業務とが混在している多様性を内包する組織との認識を持つようになるケースが増えそうです。

請求書は個人名義でとか

例えば、税理士や弁護士等の士業による合同事務所が民法上の任意組合に該当するのか否か、あるいは組合としての個々の業務に、民法上の組合としての固有業務とそれ以外の業務とが混在する多様性を内包しているか否か、というような点検です。
典型的な事例を想定すると、合同事務所から発行される税理士報酬や弁護士報酬を、事後においては、合同事務所名義ではなく、合同事務所に所属するインボイス発行個人士業者としての名義に変更して請求する、というような形式に改めることです。