厳格な運用が求められる
変形労働時間制

変形労働時間制を適用し、複数のシフトパターンにより労働させているケースがありますが、就業規則にすべてのシフトパターンが記載されていなかったとして変形労働時間制が無効とされた裁判例が出ています。以下では、変形労働時間制を運用する際の注意点をとり上げます。

定めが必要な事項

例えば1ヶ月単位の変形労働時間制を導入し、就業規則に定める場合、以下の事項をすべて定める必要があります。

① 対象労働者の範囲
② 対象期間・起算日
③ 労働日・労働日ごとの労働時間

 ①の「対象労働者の範囲」は、変形労働時間制の対象となる労働者の範囲を明確に定める必要があります。
 ②の「対象期間・起算日」は、例えば「毎月1日を起算日とし、1ヶ月を平均して1 週間当たり40 時間以内とする」のように、具体的に対象期間と起算日を定める必要があります。なお、対象期間は1ヶ月以内の期間であれば、2 週間や4 週間とすることも可能です。
 ③の「労働日・労働日ごとの労働時間」は、シフト表や会社カレンダーなどで、②の対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。
シフト制労働者で月ごとにシフトを作成する場合は、全ての始業・終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続・その周知方法等を定めておく必要があります。

運用する際の注意点

複数のシフトパターンがある場合、就業規則には、代表的なものだけを記載しているようなケースや、様々なパターンに関する記載があるものの実態とずれていたり、実態はさらに細かいシフトパターンがあったりするようなケースがあるでしょう。 

変形労働時間制が無効になった裁判例では、「原則として」と記載し、4 つのシフトパターンを定めたのみで、すべてのシフトパターンを記載していなかったとして、労働基準法第32 条2の「特定された週」または「特定された日」の要件を充足するものではないことから、変形労働時間制は無効であると裁判所が判断しました。 

ひとつの裁判例であるものの、会社は、就業規則にすべてのシフトパターンの記載があるかを確認し、記載がなければ追加し、また、今後において、記載されたシフトパターン以外の時間で勤務しないように管理していくことが求められます。

変形労働時間制は、特定した労働日、労働日ごとの労働時間を会社の都合で変更することはできないとされています。会社の都合で変更するような誤った運用もみられることから、適正に運用できているのかについても確認し、問題があれば改善しましょう。