給料の差押え
給料の差押えとは、自社に勤務する従業員が、何らかの事情によって、その有する借金等の債務を返済できない状態(滞納している状態)において、債権者が債務者である従業員の勤務先(第三債務者)に対して有する給与債権を差押えることです。
なお、ここでは、会社を「第三債務者」と呼びますが、これは法律上の呼び方であり、会社も当該従業員の債務を負うというような意味ではありません。ただし、会社は法律の定めに従って一定の手続きを行う義務があります。
給料の差押えがあった場合の会社の対応
(1)従業員に給料の全額を支払ってはいけません
給与債権が差押えられた場合には、裁判所から第三債務者である会社に対し、「債権差押命令」という書面が送られてきます。この書面を受け取った会社は、差押えの対象である従業員に、その給料の全額を支払うことはできません(一部を支払うという意味です)。なお、労働基準法との関係などから、従業員本人の同意を得ず、一方的に会社が一定額を控除して良いのか疑問が生じる経営者もいるかもしれませんが、差押えは民事執行法に基づく手続きという法律行為ですので、従業員本人の同意なく給料の一部を控除しても問題ありません。
(2)従業員等に支払う給料の計算
給料は生活の維持を図るための大切な原資であることから、その全額を差押えることは禁止されています。したがって会社は法律(民事執行法第152条第1項)に規定する計算方法により計算した金額を、給料から控除して債権者に支払うことになります。なお、本稿では詳細な計算方法については省略しますが、「給料及び賞与と退職金については計算方法が異なること」、また、「債権の性質(消費者金融などによる通常の債権と養育費などの特別な債権)によっても計算方法が異なる」という点について述べておきます。
(3)陳述書の提出
「債権差押命令」には陳述書が同封されていることがありますが、その場合には、会社は、陳述書に必要事項を記入して、裁判所及び債権者に返送する必要があります。